リモートワークが平気な社員とメンタルヘルスが悪化する社員の差は何か?

リモートワークが平気な社員の特徴

高い自己効力感

リモートワークに適応できる社員は、一般的に「自己効力感(Self-Efficacy)」が高い傾向にあります。自己効力感とは、「自分ならこのタスクを達成できる」と信じる力です。自己効力感が高い社員は、業務に対して自信を持ち、リモート環境でも自己管理が可能です。

この特性は、仕事における課題を自分の力で解決できると感じているため、リモートでの作業環境でも柔軟に対応できます。科学的な研究では、自己効力感が高いほど、ストレスに対しても強く、メンタルヘルスの維持に繋がることが示されています。

高い自律性と自ら動ける姿勢

リモートワークを難なくこなす社員は、自律性 が高く、指示待ちではなく自ら動く「プロアクティブな姿勢」を持っています。これにより、オフィスでの上司や同僚のフィードバックが即座に得られない環境でも、計画を立て、自らのペースで仕事を進めることができます。

例えば、プロジェクトの進捗が不明確な場合、プロアクティブな社員は上司に進捗を確認する前に、自ら解決策を考えたり、次のステップに進むための情報収集を行ったりします。これにより、リモートワークでも「待ちの姿勢」ではなく、業務が滞ることなく進行します。

適応力が高く変化に柔軟に対応できる

リモートワークが上手くいく社員は、適応力 にも優れています。リモート環境では、オフィス勤務時と比べて不確実性や変化が多くなりますが、適応力の高い社員は新しい状況に柔軟に対応することができます。

例えば、リモートワーク中に技術的な問題やプロジェクトの進行に予期せぬ変更が生じた場合でも、こうした社員は迅速に状況を受け入れ、新しい解決策を模索します。適応力の低い社員が変化に対して抵抗感を持ち、パフォーマンスが低下するのに対し、適応力の高い社員は状況に応じて新しいスキルやツールを迅速に習得することができ、結果としてメンタルヘルスの悪化を防ぐことができます。

自己モチベーションの高さ

リモートワークでは、自分自身をモチベートする力が欠かせません。上司や同僚の励ましや指導が物理的に存在しないため、自分自身で目標を設定し、達成に向けて動くモチベーションが必要です。

例えば、自己モチベーションが高い社員は、リモートワークでも朝にきちんとルーティンをこなし、日々の目標を設定し、それを達成することに喜びを感じます。これにより、自己評価も高まり、長期的に見てもメンタルヘルスの維持に繋がります。

己決定理論の観点から、自己モチベーションが高い社員ほど、仕事に対する内発的な動機づけが強く、外的な報酬が少なくても高い成果を上げることが確認されています。この内発的な動機づけは、仕事に対する満足感や自己成長に直結し、リモート環境でも高いパフォーマンスを維持できる要因となります。

知的好奇心の強さ

リモートワークが平気な社員には、知的好奇心 が旺盛であることも共通の特徴です。新しいスキルや知識を積極的に学び、未知の状況や変化にも柔軟に対応できるため、リモート環境でも業務の進行に支障をきたしません。彼らは自己成長を目指し、自ら学び続けることに楽しさを見出します。

知的好奇心が高い人は、新しい情報や技術を学び続けることでストレスを軽減し、適応能力が高まることが示されています。リモートワークのような変化の激しい環境においても、彼らは新しいチャレンジに積極的に取り組むため、メンタルヘルスの維持に役立つことが確認されています。

高い問題解決能力とクリティカルシンキング

リモートワークでは、自ら問題を解決する力が非常に重要です。オフィス勤務とは異なり、すぐに上司や同僚に相談できない場合も多いため、問題解決能力 や クリティカルシンキング(批判的思考力) が求められます。これらの能力を持つ社員は、自分で問題を分析し、最適な解決策を見つけることができます。

クリティカルシンキングや問題解決能力が高い社員は、問題に対するストレス耐性が強く、不安や混乱に直面しても論理的に対応できるため、リモートワークのような予測不能な状況でも強いパフォーマンスを発揮します。これにより、メンタルヘルスにも良い影響を与えることがわかっています。

デジタルリテラシーの高さ

リモートワークでは、デジタルリテラシー(デジタル技術の理解と活用能力)が非常に重要です。メールやチャット、ビデオ会議ツールを使いこなすことができる社員は、リモートワークにおけるコミュニケーションや業務進行で困難に直面することが少なく、スムーズに仕事を進めることができます。

デジタルリテラシーの高い社員はZoomやTeamsなどのビデオ会議ツール、SlackやTrelloなどのタスク管理ツールを効率的に活用し、チームメンバーとのコミュニケーションを円滑に進めます。こうしたツールを活用することで、物理的な距離を感じさせない業務環境を作り上げることが可能です。リモート環境での情報のやり取りや業務進行をスムーズに行えるため、コミュニケーション不足や孤立感を感じることが少なく、メンタルヘルスにも好影響を与えることが示されています。

リモートワークでメンタルヘルスが悪化する社員の特徴

社会的つながりへの強い依存

リモートワークでメンタルヘルスが悪化しやすい社員の一つの特徴は、社会的なつながりへの強い依存 です。対面でのコミュニケーションや人との直接的な関わりを重要視する社員は、リモートワーク環境で孤独感を抱きやすく、結果としてメンタルヘルスが悪化する可能性が高いです。

例えば、オフィスでの会話や同僚との日常的なやりとりが仕事のモチベーションになっている社員にとって、リモートワークは孤立感を生み出します。特に、チームの一体感や上司・同僚との距離感が大きなモチベーション要素となっている場合、物理的な距離が心理的な距離としても感じられ、ストレスが増大します。

境界管理の困難さ

リモートワークでは、仕事とプライベートの境界が曖昧になりやすいです。境界管理が苦手 な社員は、仕事の開始・終了の切り替えがうまくできず、常に「オン」の状態が続くため、精神的および身体的な負担が大きくなります。これが長期的にはメンタルヘルスの悪化に繋がります。

リモートワークでは、家庭内での生活と業務が混在しやすいため、仕事の終了時間を明確に設定せずにずるずると業務を続けてしまう社員がいます。また、家庭の事情で日中の仕事が中断されることも多く、仕事のリズムが崩れてしまうことがしばしばです。こうした状況に置かれると、リモートワークの自由さがかえって過剰なストレスを生み、燃え尽き症候群に繋がるリスクが高まります。

高い不確実性への不安

リモートワークに伴う新しいテクノロジーや、日々の仕事の進行に関する不確実性が増すことで、不確実性に対する不安 が強い社員は、過剰なストレスを感じやすくなります。新しい働き方への適応に時間がかかり、予測不能な状況に対して強い抵抗感を持つ社員は、リモートワークの環境に不安を感じやすいです。

例えば、リモートワークでは、これまでのようにリアルタイムで進捗を確認できないことから、不安を抱く社員もいます。また、技術的なトラブルやプロジェクトの進捗が予定通り進まない場合に強いストレスを感じる社員は、こうした予測できない状況に不安を抱き、心身の疲弊を招きやすいです。

低いデジタルリテラシー

リモートワークでは、オンラインツールや技術的な対応が不可欠ですが、デジタルリテラシー の低い社員はこれらのツールに適応するのに苦労し、業務が滞ることでストレスを感じやすくなります。ツールの習得に時間がかかる、または技術的なトラブルに対処できないことで不安が募ります。

例えば、オンライン会議ツールやプロジェクト管理ツールの使い方がわからず、会議に遅れる、資料をうまく共有できないといった事態に直面する社員は、こうした技術的な問題が積み重なることで仕事へのモチベーションを失いやすいです。また、テクニカルサポートへの依存が強くなり、自己効力感が低下するケースも多く見られます。

家庭内の環境ストレス

リモートワークがメンタルヘルスに悪影響を与える理由の一つとして、家庭内の環境ストレス が挙げられます。自宅で仕事をする環境が整っていない、あるいは家族との同居や家庭内の雑音が仕事に影響を与える場合、リモートワークの利点を享受することが難しくなります。特に、小さな子どもがいる家庭や、スペースが限られている環境では、集中力を維持することが困難であり、それがメンタルヘルスに影響を与える可能性があります。

例えば、家庭内で小さな子どもが頻繁に泣いたり、声をかけられたりすることで、仕事中に頻繁に中断を余儀なくされる社員は、集中力を維持できずにストレスを感じやすくなります。また、家族との生活空間と作業スペースが物理的に近いため、仕事に対しての没入感が損なわれ、仕事に対するモチベーションが低下することがあります。

職場での役割意識が強い社員

オフィスでの自分の役割に強いアイデンティティを感じている社員は、役割喪失感 をリモートワークで強く感じることがあります。職場の物理的な環境や対面での人間関係が、彼らの仕事に対するモチベーションや誇りを支えていた場合、それがリモートワークに移行することで失われ、自己意識が揺らぎ、メンタルヘルスに悪影響を与えやすくなります。

例えば、オフィス内でリーダーシップを発揮していた社員や、部下との直接的な関わりが仕事の意義だと感じていた社員が、リモートワークでこれらの役割を果たせなくなると自己の存在意義を見失うことがあります。リモート環境では、リーダーシップや直接的なフィードバックの機会が減少するため、これが孤立感や無力感に繋がります。

プロフェッショナルな環境の欠如

リモートワークではオフィス環境に欠けることがモチベーションの低下や心理的な負担を引き起こすことがあります。オフィス環境は、仕事に集中するための物理的・心理的なシグナルとして機能しており、リモートワークではこれが失われることによって、仕事に対する集中力や責任感が低下する社員もいます。

自宅で仕事をする際、専用の作業スペースがない場合や、家庭内の環境が整っていない場合、社員は自分のパフォーマンスを最大限に発揮することが難しくなります。リビングや寝室での作業は、仕事とプライベートの境界を曖昧にし、集中力の低下を招くため、結果的に仕事に対する不満やストレスが蓄積されることになります。

リモートワーク適応能力 ≠ 全体的な能力

リモートワークに「平気だ」という社員は自己効力感や自律性、タイムマネジメント能力、デジタルリテラシーなど、リモート環境に適応するための能力が高いことが挙げられます。しかし、これらのスキルはリモートワークに特化したものに過ぎず、全体的なパフォーマンスや業務に対する能力とは異なる側面を持っています。

対面でのチーム運営や組織文化への貢献度

「リモートワークでメンタルヘルスが悪化する社員」の特徴を振り返ると、社会的なつながりの重要性や、オフィスでの役割感を強く持つことが挙げられます。これらは、決して「能力の低さ」を示すものではありません。むしろ、対面でのチーム運営や組織文化への貢献度が高い社員であることが多く、組織全体の士気を高めたり、対人関係の強化を図るために欠かせない存在です。

また、境界管理が苦手な社員も、オフィス環境での仕事においては集中力を発揮し、効率的に業務をこなすことができます。特に、明確な時間の区切りや周囲のサポートがあることで、その能力を十分に発揮することが可能です。

リモートワークと職務適性の違い

リモートワークでの成功には、特定の能力が求められる一方で、職務によってはリモートワークそのものが適していない場合もあります。例えば、以下のような業務では、対面でのやり取りが重要であり、リモートワークは必ずしも最適ではありません。

クリエイティブ業務やブレインストーミング:対面のフィードバックやその場のアイディア交換が重要な業務では、リモートワークがかえって不利になることがあります。

緊急対応が必要な業務:現場での対応や即時判断が求められる業務では、リモートでは対応が遅れる可能性があるため、対面での業務が好まれる場合があります。

「リモートワークが平気」だけで評価するリスク

もし企業がリモートワークに適応できるかどうかだけで社員の「優秀さ」を評価すると、現場での重要な貢献を見落とすリスクがあります。リモートワークに適応する社員とオフィス環境で高いパフォーマンスを発揮する社員の両方を評価し、業務に適した環境やサポート体制を整えることが重要です。

たとえば、リモートワークを継続する方針を取る企業でも、対面での会議やチームビルディングの機会を定期的に設けることは効果的です。また、リモートワークに向いていない社員には、ハイブリッド勤務や、オフィスでの勤務機会を増やすなどの柔軟な対応を行うことが、全体のパフォーマンスを引き上げる手段となります。

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